決して大袈裟ではなく、競艇の「フライングおよび出遅れ」は重罪ともいえる違反行為。なぜなら、その違反によって施行者に大損害を与えてしまうから。
レースを主催する施行者の収入源は売上しかありません。当然、それを失ってしまうと運営に支障をきたすので、どんな違反よりも犯してほしくないのが本音でしょう。
その為、フライングに対するペナルティ(罰則)は重たく定められているのです。
そこで今回は、フライングの基本となるルールをはじめ、選手に課される罰則内容を解説します。覚えておくと予想にも活かせるので、可能な限り最後までお付き合いください!
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競艇におけるフライングのルール
競艇でフライングが起きやすいのは「スタートの難しさ」が影響しています。
まずはその点について、競艇のフライングがどのような形で判定されるのか?スタートを切るまでの基本的なルールを理解しておきましょう。
競艇は「フライングスタート方式」
競馬や競輪は、スターターの合図でレースが始まります。一方、競艇で採用されているのは「フライングスタート」というスタート方式。
フライングスタートとは、競艇のみが採用しているスタートのルール。
ピットアウトした選手は、待機行動時間(1分40秒前後。競艇場によって異なる)を使って進入コースを決め、スタートラインに艇を向けて助走の準備に入ります。
そして、レース開始は待機行動時間がゼロになった瞬間。離れた位置から助走をつけてスタートラインを通過していきます。
スタートの基準は大時計の針
待機行動の残り時間を表示するのは、各競艇場のスタートライン付近に置かれているアナログの大時計。
スタート1分前から針が動き始め、黄色い針が12時の位置に来るのと同時に通過すれば「コンマ00」。コンマ01でも早くラインを越えると「フライング」です。
選手たちは大時計の針を見ながら助走を開始。周りの景色、風の強さ・向きなどでタイミングを計り、コンマ0の通過を目指してスタートしています。
フライングが宣告されるまでの流れ
競艇でフライングの判定を下すのは、開催場の審判長です。
スタートでフライングした艇(またはその疑いがある艇)がいた場合、レース映像に「スタート判定中」の文字が表示。瞬時にスリット写真を確認し、そのうえでフライングの有無を判定します。
フライングを犯した艇番のコールは通常審判長が行います。ただ、場内実況のアナウンサーが伝える競艇場も中にはあります。
選手には水面上にある電光板で知らされ、フライング艇は速やかにレースから離れてピットに戻らなければなりません。
フライングに気づかず完走した例も
上記動画は、津競艇で開催された2019年10月15日のレース。
デビューしたての新人ならまだしも、大失態を犯したのはSGを5度も制覇している「田中信一郎」選手。よっぽど集中していたのか、コンマ01のFに気づかず完走してしまいましたw
ちなみに、内規違反で即刻帰郷。さらに、このフライングは2本目となり、碧南の教習所行きが決定するダブルパンチを食らうことに。
実況アナが「6号艇は返還欠場です」と10回ぐらい言ってます(笑)それにしても、田中選手に追われる艇は怖かったでしょうね。
フライング艇への罰則内容
各方面に迷惑を掛けてしまう競艇のフライング。大損害となる原因にもなり得るため、当事者に課されるペナルティも決して軽いものではありません。
はたして、フライングした選手にはどんな厳しい罰が待っているのか?
大きく加算される事故点
フライングをした選手には「20点の事故点(優勝戦では30点)」がつきます。
審査期間中の事故率を大きく上げるものとなり、期別審査にも影響を与えます。また、事故パン(事故率オーバー)の基準である0.70を割り込むには、通常1本のフライングにつき最低29走の無事故(20÷29=0.689)が必要。
F2以上となれば、フライング以外の事故にも気をつけながら期末まで慎重に走る必要が出てきます。
級別審査において事故率が0.70を超えると、どれだけ成績が良くてもB2級へ降格します。
出走中の開催は「賞典除外」に
フライングをした選手に対して即時に与えられる処分が「賞典除外」。
レースには引き続き出走できますが、勝ち上がりの権利が失われます。予選の着順がどれだけ良くても得点争いからは除外され、準優および優勝戦には出場することができません。
それともう1つ、翌日以降は一般戦にしか出走できないという規定も。
どんな選手であっても「特賞」「ドリーム戦」「選抜」など、特典や賞金が高いレースには最終日まで出走できません。
「30・60・90日」の斡旋辞退ルール
フライングのペナルティとして最もよく耳にするのが罰則休。「F休み」とも呼ばれる斡旋辞退の処分です。
フライングの本数は審査期間(5~10月、11~翌年4月)の単位でカウントされます。休みの日数は以下の表の通り、期間内に切った数によって変わります。
F本数 | F休み日数 |
1本目(F1) | 30日 |
2本目(F2) | 60日(計90日) |
3本目(F3) | 90日(計180日) |
フライング4本目は180日(計360日)となります。しかし、長期斡旋保留なども絡んで引退勧告に及ぶ事例となるため、過去にF4となった選手はいません。
F休みが始まるのは、決まっている斡旋が全て終わった翌日から。仮に、1本目のF休みが消化されないまま2本目、3本目のFを切った場合、90日間(あるいは180日間)連続してレースに出られないことに。
F2(90日休み)はその間の収入がゼロになることを意味します。中には工事現場でバイトして凌いだ選手なども。
重賞レースのフライングはより重たい罰則
女子戦 | 3ヵ月間女子戦の選出除外 |
PG1/G1/G2 | 3ヵ月間PG1・G1・G2の選出除外 |
SG | 次のSGから4競走の選出除外 3ヵ月間PG1・G1・G2の選出除外 |
フライングは一般戦でも大きな収益減となります。ただ、投票額が大きくなる準優や優勝戦のフライングは、施行者により大きなダメージを与えてしまいます。
そうならないための策として、大きなレースで犯したFには通常よりもかなり厳しい罰則が待っているのです。
返還額の大きさを考えれば仕方のないこと。
特に注意したいのは、G1・SGの優勝戦と準優勝戦。賞金を稼ぐために欠かせないグレードレースとなるため、3ヵ月~6ヵ月の斡旋停止は何よりも痛い罰則と言えます。
「非常識なフライング」は罰休延長に改正
「非常識なフライング」とは、コンマ05以上のフライングを犯した選手が対象となるペナルティ。
原則、1回でも犯すと「即日帰郷」でしたが、昨今はコロナ禍で選手数確保が厳しい開催も多い状況。その為、レースに残すかの判断は施行者の判断に委ねる…といった曖昧な感じ。
あまりにも平等さに欠ける罰則だったので、2022年5月1日より即日帰郷はなくなり「F休み5日加算」の新しいルールに改正されました。
F本数 | F休み(改正前) | F休み(改正後) |
1本目 | 30日 | 35日 |
2本目 | 60日(計90日) | 65日(計100日) |
3本目 | 90日(計180日) | 95日(計195日) |
選手、ファンにとって良い改正だと思います!
強風などによる影響もあって、非常識なフライングが全て選手責任とは限りません。また、ただでさえ出走数が少ない競艇において、欠場艇がいるレースはつまらないですし。
まぁ、ルールを改正した一番の理由は、最後まで出場させて売上を下げないことが目的だと思いますがw
F休み中は収入ゼロ…バイトで生計を立てる選手も
個人事業主である競艇選手には固定給がなく、フライング休み中の収入はゼロ。
F3の長期休みや収入が安定していない選手の場合、短期的に働けるアルバイトなどで生活費を稼ぐしか方法はありません。
また、複数のFによって規定の出走回数に届かず、B2級に降格してしまうケースも。SGレース復帰には最低でも1年程度掛かるので、賞金の少ない一般戦で耐える生活が待っています。
フライングのペナルティはなぜ重い?
わざとフライングしている訳ではないのに、なぜ重たいペナルティを課すのか?考えられる理由を3つ。
- フライング艇は「返還欠場」になる
- 売上が大幅減…施行者は損害を被る
- 1マークの展開が変わってしまう
フライング艇は「返還欠場」になる
フライングを切ると失格ではなく「返還欠場」となります。
スタート事故については「競走に参加していない」扱いとなるため、フライング艇に関係する全ての舟券は返還されるルールです。
フライングした選手を軸に買っていたファンは無傷で済みます。しかし、返還艇が出た分だけ各賭式のオッズは下がり、的中舟券の払戻金額も想定より低くなってしまいます。
複数のFが出た場合、万舟券だったはずの的中が3ケタ配当にまで落ちてしまう…なんてケースも少なくありません。
売上が大幅減…施行者は損害を被る
人気を集める選手がフライングに絡んでいた場合は一大事。返還金額はそのまま売上損となり、競艇場の収益を大きく落とす事態に繋がってしまうからです。
競艇で最も有利な1コースはもちろん、重賞レースほど返還額が大きくなりやすく、売上の8~9割が消えてしまうことも。
直近ではSGメモリアルで「13億円超えの返還」が起こったばかり…
舟券を買っているファンからすれば、スタートで出遅れるよりフライングの方がマシに思えるかもしれません。
ただ、賞金や多額の広告費を費やしてる施行者にとって、億単位の返還をするのは辛すぎる出来事。繰り返しされると存続できないので、選手にも同様のリスクを与えているのでしょう。
1マークの展開が変わってしまう
ファンにとって厄介なのは、1マークの展開が大きく崩れてしまうことです。
通常、フライングの宣告が行われるのは1周目のバックストレッチあたり。スタートが明らかに早いタイミングでもすぐに戦線離脱とはなりません。
その為、多くのケースはフライング艇が1マークを先マイする形となり、他艇が進路を塞がれて大波乱となるのが一般的。
フライングは不正な形で1マークの展開を乱す行為です。全返還されるなら良いですが、返還されない買い目を購入している人も沢山いるでしょう。仮に自分がその立場になったら、より厳しい処分を期待するのでは?
競艇「フライング」を予想に活かす方法
関係者には百害あって一利なしのフライングですが、ファンにとっては「舟券予想の材料」に活かすことが可能。
スタートの良し悪しはレース結果を左右するので、フライングに関するデータは決して無視できません。そのうえで、活用するポイントをいくつか解説しておきます。
フライング1本「F1」の見極め
フライングを切った選手は「F持ち」として出走表に記載されます。
F1は審査期間中に1回フライングを切っている選手ですが、1回の場合は「重荷に感じる選手 or 気にしない選手」の差が出てきます。
キャリアの浅い若手選手や事故率の高い選手だと、F1でもスタートの踏み込みがは消極的になりがち。特に開催初日であれば、無理できない選手の判断もしやすくなるでしょう。
絶対に2本目のFを切れない選手の判別ができれば、スタートで凹む想定をした舟券予想が可能になります。
「隠れF持ち」の選手に注意
「F持ち」については、期末(10/30、4/30)をもって全選手一斉にリセットされます。
しかし、新しい期に入っても過去のF休みは必ず消化しなければならないルール。したがって、期の序盤は前期のF休みが未消化となっている選手も多数います。
「隠れF持ち」の選手は、期間1本目のフライングでも長期休みを食らうリスクがあります。より慎重なスタートになる可能性は高いでしょう。
「隠れF持ち」の調べ方
「ボートレース日和」を使うのがおすすめ!以下の手順を踏めば、1分程度で簡単に「隠れF持ち」を調べることができます。
- 「ボートレース日和」にアクセス
- 対象レースを選択
- 「出走表」のタブを選択
- 「フライング」の項目までスクロール
「未消化」が1以上の数値なら、消化してない隠れFがあると判断してください。
フライングをビビらないケースも
トップ層で活躍する選手は「この時期にFを切ってはいけない」という意識を常に持っています。
SGの開催期間にF休みが重なってはいけませんし、賞金の積み上げを考えれば審査期間中のFは最低でも1本に留めたいところ。
裏を返せば、SG開催のない時期などに「今ならFを1本切っても影響が少ない」という期間も出てきます。そのような状況なら、いつもよりスタート評価を上げて予想するのはアリ。
もちろん、わざとFを切る選手はいません。ただ、成績に響かない程度でF休みを上手くコントロールしているベテラン選手は意外と多いです。
強気のスタートをいける選手はマジで強いです。カド位置にそういった選手がいるレースはぜひ狙っていきましょう!
まとめ
競艇の「フライング」は、選手にとって最も犯したくない違反行為。
選手生命を脅かすこともあり、度重なるFで地獄に突き落とされたケースは多々あります。当然、そのリスクがある状態でスタートを決めるのは大変なこと。
ただ、我々ユーザーはその心理状態を読むことこそ、的中率向上に不可欠な予想材料。決して簡単ではありませんが、常にどういった心情なのか?考えておくことが大切です。
最後に、軸にした艇がフライングしても罵倒するのは止めましょう。一番辛いのはボートレーサーたちなので。